なぜ財産や重要書類の確認が終活の第一歩なのか
「親の終活」と聞くと、何から始めればいいのかわからず、後回しにしてしまいがち。
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、2025年時点で日本の総人口に占める65歳以上の割合はおよそ29.4%です。高齢化はもはや他人事ではなく、多くの家庭にとって身近な現実になりつつあります。
親が元気なうちなら、本人に話を聞きながらゆっくり整理を進められます。しかし、急な入院や病気で判断が難しくなると、家族だけで通帳や証券、保険の内容を探し出すのは、想像以上に時間と労力がかかります。
大切なのは「財産を調べる」ことではありません。「もしものときに困らないよう、必要な情報を家族で共有しておく」という視点です。財産や重要書類の整理は、生前整理の一環として行われることが多い準備です。この記事では、親の終活における財産整理の第一歩を、わかりやすく紹介します。
まず確認したい財産・重要書類チェックリスト
まずは、どんな財産や書類があるのか、全体像を把握しましょう。以下はチェックリストとして活用できます。
預貯金 □ 銀行名 □ 支店名 □ 口座数 □ 通帳・キャッシュカードの保管場所 最近はネット銀行だけで通帳がないケースも増えています。
不動産 □ 自宅 □ 土地 □ 駐車場 □ 固定資産税の納税通知書 □ 登記識別情報通知(旧・権利証) 以前は「権利証」と呼ばれていましたが、現在は「登記識別情報通知」という書類が発行されています。
保険 □ 生命保険 □ 医療保険 □ がん保険 □ 火災保険 □ 保険会社名・証券番号
年金・公的給付 □ 年金関係の通知書類 □ 受給内容
有価証券・投資 □ 株式 □ 投資信託 □ NISA □ iDeCo □ 証券会社名(複数ある場合はその一覧)
借入・ローン □ 住宅ローン □ カードローン □ 消費者金融の利用有無 □ 保証人になっている契約の有無 負債も相続の対象になるため、忘れずに確認しましょう。保証人になっている契約があると、状況によっては債務を負う可能性があるため、あわせて確認しておきましょう。
デジタル資産 □ ネット銀行 □ ネット証券 □ PayPayなどのキャッシュレス決済 □ 楽天ポイントなどの各種ポイントサービス □ Amazon・Apple ID・Googleアカウントなどの各種アカウント 目に見えにくい資産ですが、年々増えています。近年は「デジタル終活」として整理する人も増えています。
見落としやすい財産 □ 銀行の貸金庫 □ 暗号資産(ビットコインなど) □ ゴルフ会員権・リゾート会員権 銀行の貸金庫を利用している場合は、その有無や利用している金融機関も確認しておきましょう。ビットコインなどの暗号資産は、家族が存在に気付けないケースも少なくありません。ゴルフ会員権やリゾート会員権も、売却できるものや資産価値があるものは相続財産となるため、所有している場合は確認しておきましょう。
デジタル関連の備え □ スマートフォンの利用状況 □ 緊急時に家族が確認できる方法 パスコードそのものを書き残すのではなく、緊急時に家族がスマートフォンの情報を確認できる方法をあらかじめ決めておくと安心です。
その他の重要書類 □ 健康保険証 □ 介護保険証 □ マイナンバーカード □ 年金関係書類(年金手帳・基礎年金番号通知書など)
重要書類はどこに保管するのがおすすめ?
書類が見つかっても、あちこちに散らばっていては意味がありません。以下の工夫で、いざというとき家族が困らずに済みます。
- 関連書類を一つのファイルにまとめる
- 耐火金庫を活用し、災害時にも備える
- 保管場所を家族に伝えておく
- 重要な書類はコピーを取り、一覧表を作る
- パスワードそのものは書き残さず、管理方法だけ共有しましょう。パスワード管理アプリやパスワードノートを使っている場合は、その保管場所だけ伝えておく方法がおすすめです
すべてを一度に揃える必要はありません。できるところから少しずつ整理していきましょう。
親に聞くときに気を付けたいポイント
財産の話は、聞き方ひとつで受け取られ方が変わります。
「財産を教えてほしい」という聞き方だと、詮索されているように感じる親もいます。そうではなく「もしものときに困らないよう、一緒に確認したい」と伝えると、話しやすくなります。
一度にすべてを聞き出そうとせず、時間をかけて少しずつ進めましょう。エンディングノート(財産や医療・介護の希望などを書き残すノート)を一緒に書きながら話を進めるのも、一つの方法です。
こんなケースは専門家への相談も検討しよう
次のようなケースでは、専門家への相談も検討してください。
- 不動産を複数所有している
- 相続人の人数が多い
- 借金がある
- 財産の全体像がよくわからない
- 生前贈与を考えている
- 相続人同士でトラブルになりそうな場合
相談先の例としては、司法書士、税理士、弁護士、行政書士、ファイナンシャルプランナーが挙げられます。相続トラブルが予想される場合は、特に弁護士への相談を検討しましょう。
よくある質問
財産って全部把握しておかないとダメ? すべてを把握しておく必要はありません。まずは通帳や保険証券など、身近なものから確認しましょう。
親が財産を教えてくれないんだけど、どうすればいい? 無理に聞き出そうとせず、少しずつ話をするのがおすすめです。エンディングノートを活用したり、家族全員で話し合う機会を作ったりする方法もあります。
認知症になってからでも確認できる? 本人の判断能力が低下すると、財産の確認や契約内容の変更、遺言書の作成などが難しくなります。そのため、元気なうちに話しておくことが望ましいです。
通帳が見つからないときはどうしたらいい? キャッシュカードや金融機関からの郵便物、年金の振込先などから取引金融機関を確認できる場合があります。本人の同意のもとで、金融機関に相談することもできます。
借金があるかどうかも確認しといた方がいい? はい。資産だけでなく、負債も相続の対象になります。なお、負債が多い場合は相続放棄という制度もあるため、事前に把握しておくことが大切です。
財産の金額まで聞いた方がいい? 無理に金額まで確認する必要はありません。まずは「何があるか」「どこにあるか」を把握することが大切です。財産の種類や保管場所を一覧にした「財産目録」を作っておくと、後々の手続きがスムーズになります。
エンディングノートって必ず必要? 必須ではありませんが、財産や希望を書き残しておくことで家族の負担を軽減できます。
まとめ|財産を把握することは家族への思いやり
財産の整理は、相続のためだけではなく、急な入院や介護など「もしものとき」に家族が困らないための備えでもあります。
すべてを一度に整理しようとせず、まずは「何があるか」「どこにあるか」を一緒に確認することから始めてみましょう。小さな一歩の積み重ねが、将来の家族の安心につながります。
※高齢化率に関するデータは、内閣府「令和7年版高齢社会白書」を参考にしています。

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